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彼女を連れて来た

「これ、恋人のカオリ」
 初めて彼女をこの家に連れて来られた時、私はガツンと頭を殴られたような衝撃を受けた。
 私とアキラが同棲し始めたのは6年前の事だ。
 高校から一人暮らしを始めるアキラが、寂しいからという理由で昔から仲の良かった私を
 このマンションに半ば強制的に連行したのが始まりだった。
「はじめまして、カオリです。」
 そう行儀よくお辞儀したカオリは、アキラにはちょっと勿体無い位可愛かった。
 顔にも口にも出さなかったが、内心私は複雑だった。
 私のほうがアキラを知ってる。
 笑っているときも落ち込むところも、この女より、よく知ってるのに。

 アキラとカオリが付き合いだした馴れ初めは、たったひとつのキスかららしい。
 元々大学で仲が良かった二人だが、ある日とうとうアキラの理性がぷっつり切れてキスをした。
 これでカオリに万一ほかに好きな人でも居たら一大事というかシャレにもならないが、
 強運にもカオリもアキラが好きだったらしい。目出度く両想いになったそうだ。
 …たった、キスひとつで変わる関係なら、どんなに良かっただろう。

「な?言ってた通り可愛かったろ、『カオリちゃん』。」
 カオリが帰った直後玄関を振り返って、自慢げにアキラがふふんと笑った。
 ああ、可愛かったよ、長い間連れ添った私なんかよりあのコを選んだ位なんだから。
 …可愛くないと、納得いかない。
「拗ねんなよ、バカ」
 よほど態度に出ていたのか、アキラは笑って、いつものように私に軽くキスを落とした。 
 …キス、たったひとつで、変わる関係だったら、どんなに、良かっただろう。

 キスなんて何回もしているが、関係が変わったことなんて、ない。
 …なんだかふいに悔しくなって、私はみゃあ、と鳴いてやった。
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